三冊の絵本

心のドラマが広がるところ、
鞠生幼稚園。

心のドラマが広がるところ、鞠生幼稚園。

子どもたちは、必ずしも大人が望む景色を
見ているわけではありません。
子どもたちは、いつも大人が「こうあってほしい」と願う姿を
なぞっているわけではありません。
いま大人である私たちをいつか乗り越え、
新しい社会を築いていく子どもたち。
その可能性を信じ、子どもたちの内にある種(たね)の萌芽を見つめ、
そこから生まれる心のドラマを大切にしたいと
私たちは考えています。

ここに長い間読み継がれてきた
3冊の絵本があります。
そのうちの1冊に登場するフレデリックという野ねずみは、
冬に備えて仲間の野ねずみが働いている姿を見ながら、
ひとり考え事にふけっています。
みんなで力を合わせて、冬を乗り切るために
木の実や草の実を集めていた野ねずみたちは
きみはなぜ働かないのか、何をしているのか、
と彼に尋ねます。少し腹も立てながら・・・。
フレデリックは、寒くて暗い冬のためにおひさまの光を、
話の種も尽きるような長い冬のために言葉を
集めているのだと答えます。

フレデリック
フレデリック
レオ・レオニ
谷川俊太郎訳
好学社

モノの流通と違って、教育は文化を生み出す営みです。
鞠生幼稚園は、子どもたちの心のドラマに共感し、
共に子どもの世界、
子どものあゆみに寄り添うために
しなやかで、深い心を耕す努力を重ねていきます。
幼稚園は文化を生み出し、守り育て、築いてゆく場所なのです。

トーマスのもくば
トーマスのもくば
小風さち 作
長 新太 絵
福音館書店

子どもたちの心の中では大人たちには想像もつかない
速さや大きさや色彩の、さまざまなドラマが生まれています。
そのドラマを的確に読み取り、スルリとその世界に
入り込むことでしなやかに子どもたちを導いてゆく。
そんな教育者の姿が表現された一冊です。

たろうのともだち
たろうのともだち
村山桂子 作
堀内誠一 絵
福音館書店

「こんにちは」とにこやかに挨拶ができたからといって
相手がいつも自分と同じような気持ちで
応えてくれるとは限りません。
他者との関係の中で子どもたちは悩み、考え、時には傷つき、
と同時に「自分一人では見つけられない“大切な何か”に
気付かせてくれる」そんな存在であることを、
子どもたちは感じることでしょう。