本質に触れながら
感性が伸びやかに広がる環境。
鞠生幼稚園に初めて来られた方は、
その佇まいや園内の静かさに驚かれることがあります。
いわゆる“幼稚園らしい”イメージの色彩やデザインから
かけ離れた空間だからかもしれません。
確かに幼児は、
明るくはっきりした色やキャラクターの描かれた物に
強く反応する傾向にありますが、
それらは一時的に子どもたちの注意を引き付けはしても、
その中間にある無限の色を敏感に感じ取ったり、
自由な造形を見いだす可能性を広げることにはなりません。
「子どもは単純なものを好み、
複雑なものや微妙な違いに気づかない」
という考え方は、間違いなのです。
むしろ、子どもだからこそ細やかに違いを感じ取る感性があり、
またそれを大人は育てていかなくてはならないのです。
私たち大人が用意する環境によって、
子どもたちの感性は狭くもなり、広くもなっていきます。
そしてこれは味覚や音感などについても、同じことが言えます。
鞠生幼稚園では
子どもたちを包み込む環境としての園舎、
遊びを支えるおもちゃや遊具など
「本当に子どもの成長に必要なものは何か」
ということにこだわり、
真に子どもらしい豊かな遊びのある生活を目指しています。
四角い机と椅子が一斉に黒板に向かって並ぶ、
「教室」のイメージに子どもたちを当てはめるのではなく、
絵本やままごとコーナーなど家庭の延長線上にある
「部屋」の雰囲気を作り、子どもたちを迎え入れます。
六角形の机と木の椅子は、子どもたちの遊びに合わせて
さまざまな形に組み合わせることができます。
廊下と各クラスの部屋を隔てる壁はあえて高めに設定され、
遊びに集中できるよう配慮された空間の中で
先生と、そして友達とのかかわりを大切にしながら、
子どもたちは1日を過ごします。
木のあたたかみを感じられるよう、
木材を多く使った園舎や園庭の遊具、
積み木をはじめとしたおもちゃを環境に取り入れています。
木に限らず、綿などの素材や土、水などを身近に感じ、
自然物に触れる心地よさを味わいながら
その美しさや不思議さに心を動かされる生活を送って欲しい。
子どもたちが幼稚園の環境の中で
一つでも「よいもの」「本物」に触れ、
豊かな想像力や創造力を培い、
感性が伸びやかに育っていくことを願っています。