読み書きは小学校から。
心は揺れ動き、心は育ちます
鞠生幼稚園では、
「どんな友達ともいつも仲良く」を目指していません。
遊びの中で出会った
「気の合う友達」「大好きな友達」との関係が深まることで
「友達と一緒にいるって、何だかうれしい」という気持ちが芽生え、
大好きになった友達と仲良くするためにはどうすればよいのか、
子どもなりに考えるようになります。
そして、その学びが友達の輪を広げ、
より広い社会に出て「苦手だな」と感じる人と出会った時も、
どうしたらよい関係を作ることができるか自分なりに考え、
さまざまな人と一緒に生きていくことができるのです。
幼児期には、大人が直接的に教え込むことで
損なわれてしまうものがたくさんあります。
「字の読み書きを教えること」もそのうちの一つです。
幼児期の子どもたちは、
遊びや生活を通して文字や数字に興味関心を持つようになります。
身のまわりで使われている文字や数字に興味を持ち、
文字のよって伝えたいことが人に伝わる喜びを感じたり、
文字や数字があることで便利になることに気づいたりします。
伝えたい思いが十分に育つ前に字の書き方を教わってしまった子は、
字が書けること自体を喜び、表現の喜びや関心の広がりは
そこで止まってしまうでしょう。
また、絵本を大人に読んでもらうべき時期に
文字の読み方を教えられた子は、
文字に対する発音の仕方はわかっても、
連なった文字から物語のイメージを膨らませる喜びは
十分に味わえないでしょう。
「あか」という文字を見て、
「あ」と「か」という2文字であると理解するだけでは、
どこか味気なく、
さびしくはないでしょうか。
花の色や絵の具の色、経験の中のさまざまな「あか」のイメージが
心いっぱいに広がる、そんな言葉に対する豊かな感性を
幼児期にこそ育てたいと鞠生幼稚園では考えます。
幼稚園と小学校との違いを大切にすることで、
幼児期に十分育った力が
小学校以降の学びを支えることができるのです。
子どもたちが周囲のモノや人、出来事に接し、
心が動くことで遊びは始まります。
体を動かすことを楽しむことで、体が育っていくように、
心が揺り動かされるような経験を重ねることで心が育つのです。
遊びを通して自分の力でできた喜びを
味わう成功体験が、
「私は(たとえ今は小さくてもこれから)何でもできるんだ」
という有能感につながり、
「もっと自分でしたい」という自立心につながります。
また人からの指示や命令によってではなく、
本当に自分がしたいことは何か、したいことをするためには
自分はどうすればよいのかを考える力が育つことで、
自分をコントロールする自律心が育ちます。
子どもたちの感性や物事をとらえる力の育ちを
大人の都合に合わせて歪めたり、
直接的に覚えこませるようなことはできないのです。
遊びを通した学びの大切さをいつも確かめながら、
心のドラマの種を鞠生幼稚園はまいています。